Rocker and Hooker

今月はROCKER AND HOOKERのデザイナー中野恵介が提案しようとしている最高にイカした新作(レディースも!)に敬意を表してワンピースとポップスのステキな関係の話を書きかけたんだけれど。。。。本来それを書かなきゃいけなかったんだけど。。。。

でも許して。ポール・ウェラー(Paul Weller)3年ぶりの来日。個人的には10年ぶりくらいに足を運ぶ予定の彼の来日公演。これを書いている時点では「明日」観に行くんで、もう心はそっちに。ちょっと今回の来日公演への参戦の意味は一入だから。。。。中野、スマン!
そしてさらに、今回は特別に「観る前/観た後」二元中継マガジンって企画で行かせて頂きます。

何といっても近年、自分でも納得して愛聴している、現役バリバリの作品を連続リリースしてくれているウェラー、そんな中での来日ってのがワクワクの最たる要因。それに加えて、最近の彼の近影がとにかくイカしている!ってのも重要。齢54歳。FBで彼や彼が70年代後半から80年代初頭にかけて所属していたバンド=ジャム(The Jam)のページに「いいね!」してるもんだから、情報がハンパなくアップされて来る。最新のウェラーのショットももちろん、そのルックス、ファッション、言ってる事、これらが全て50歳の自分の腑に落ちる!あぁ、FB立ち上げるのが本当に楽しみな日々ですわ。
そしてチョッとシビアな話をすると、何だか今回の来日公演は1980年代、自分が初めて彼を観たジャムの公演以来の特別なモノになりそうな気がしているのです。歴史が繰り返すのだとしたら、ウェラーの全てを、栄枯盛衰のあった彼の音楽史/人生の縮図の観れるライヴになりそうな予感がするのだ、このツアー。もちろん根拠があってこその、その心臓ハクハク感。だから良い意味でも悪い意味でも、これを見逃す訳には行かないって感じてる。そろそろ彼のソロ・キャリアが、本当にピークに差し掛かって来ていると思っているから。


その根拠としているのは、ウェラーの近年5作品における作品内容がかもしだしているデジャヴュ感とでも言えば良いのだろうか。 以下、その個人的、無謀な根拠一覧。

ってことなのだ。
で、2009年の来日以来となるこのツアーは、2004年リリースのカヴァー・アルバムで一回総括された歴史から改めて始まったウェラー史ってことで考えると、最新アルバムを旗印としながらも、上記の作品における背景それぞれが象徴的に反映された、ポール・ウェラー、人生の俯瞰ツアーとも呼べるものになるのではないか!?なんて思ってたりするわけで。。。。
だからこその、「今回は!」みたいな意気込みがあって、諸々のモチベーションで、迷わずチケットをゲットしたわけです。
凄いな、マニアの思い込み(苦笑)。

ポール・ウェラー、1958年生まれ。意外な同年代組にプリンス(Prince)と故・マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)がいる(笑)。自分、1962年生まれ。前にも書いたけれど、ウェラーがデビューした18歳の時にリリースした最初のジャムのシングル作品『イン・ザ・シティ(In The City)(シングル)』をちょっと遅れて聴いたんだけれど、それはいきなり16歳の自分の青春のアンセムとなった。
自分はよく公式発言(笑)で「クイーン(Queen)、キッス(Kiss)、エアロスミス(Aerosmith)のリアル・タイム体験御三家を中学時代に享受したが、中学校三年生の時にNHKのニュースで観たセックス・ピストルズ(Sex Pistols)に全部もって行かれて、その後はパンク三昧!」と言っているが、実際は微妙に違います(笑×2)。まず、ピストルズはそのファッションとロゴなどのグラフィックに夢中になりましたが、即効購入した日本デビュー・シングル『ゴッド・セイブ・ザ・クイーン(God Save The Queen)』にはちょっと「??」でした。それまで愛していたロックに比較するとあまりにもメロ感が無さ過ぎて。で、実際にグッと来たのは高校に入ってすぐに聴いたジャムの方ですね、当時のパンク・シーンでは。いやいや、今考えるとジャムは精神はパンクだけれど、音楽はまるっきりパンクと定義されていたものとは違ってました。そういうアルバムは1枚も無い。全てキンクス(The Kinks)やフー(The Who)、そしてもちろんビートルズ(The Beatles)からの影響を若きウェラーが正しく受けて創出された当時の最新型音楽。当然、根底には〈黒人音楽を聴いて踊るのが最高にヒップ!〉とされたモッズ・カルチャー直系のグルーヴィーな音楽愛が貫かれていましたが。余談ですが、自分、ジャム、そしてニュー・ウェイヴ・カルチャーが全てだった!と言っていたその後の十代も、しっかりアメリカのシンガー・ソング・ライター作品なんかも聴いてましたよ。すなわちオールド・ウェイヴも。。。。それが1970年代日本、洋楽ファンの典型的な在り方でもあったんです。今じゃそんな聴き方、信じられないでしょ?みんな〈ジャンル〉にこだわるから。

とにかく1980年代、すなわち自分の〈若気の至り〉を牽引してくれた、そして価値観を決定づけてくれていたのがポール・ウェラーだったんです。今思うと、自分でも笑っちゃうような当時の想い出もあるなぁ。
1980年代初頭のことで言えば、「ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のライヴに行くヤツの気が知れない。博物館の化石標本を観に行ってどうするんだ!?」的なウェラーの発言を掲載した記事を目にしたら、もう即刻ストーンズNGになる自分がいたわけで(笑)。ストーンズは、ちょうどそのすぐ後にキャリア第三期のピークとも呼べるツアーをしていた頃。そのツアーは名匠ハル・アシュビー(Hal Ashby)により映画(『Let’s Spend the Night Together』)にもなり、実は自分もワクワクでその作品を映画館に観に行って盛り上がっていたりしてたくせに。でも、ウェラーがそう言うんなら、公式には否定だ、ストーンズ(大苦笑)。ちょっと気まずい。さらに、そのストーンズの記事の掲載されていた雑誌では、ウェラーは同時にレナード・コーエン(Leonard Cohen)にも触れていて、「クリスマスが大嫌いなんだ。何もかもが寝静まったような静けさが。まるでレナード・コーエンの音楽を聴いているような気分になる。聞いたことがあるかい?クソくらえ!なんだよ」。そうか!チョコッと聴いたことのあるあの辛気くさいシンガー・ソング・ライターもNGだ!なんて。。。。もはや、ウヒヒッ!って流すしかないなぁ(笑)。現在、50歳の自分にとってコーエン翁、ここ20年ばかり最も愛聴しているアーティストの一人だし(大苦笑×2)。
うん、でも、実際に今ウェラーのCD/LP棚を漁ってみたら、そこにもきっとあるはずだよ、コーエン作品(笑)!VIVA若気の至り。

とにかく10代後半の自分にとってのアイデンティティ(青臭い、ね)創出と、奇跡的なファッション・アイコンとして〈ポール・ウェラー〉は掛替えなく素晴らしかったってことを書いておきたい。
はい、ここまでが観る前編です!さてさて、それでは明日(10月22日)の東京公演を心待ちにするとしますかね!どんなライヴになることやら。オープニング・アクトはOKAMOTO’Sだって。


ここからは全く書いている日にちが異なります。

って思いで訪れました、Zepp DiverCity TOKYO。
危ない危ない、Zepp Tokyoに向かうところだった。近年、ハコ(会場)の名前がスポンサーの都合で勝手に頻繁に変わり過ぎなんで、今回の名称もどうせそんな理由の一環でしょ?なんて思って、地上に上がったZeppの最寄り駅。ありゃありゃ!?同席者と一緒で良かった。そもそも会場が全然別のベクトルで展開されてた!凄い既存価値観変換な建物発見。あら!?こっちなのね!って。
そんなこんなで辿り着いた会場でまずは興奮のグッズのコーナー!!なんだけれど、う〜〜ん、ここでも、ありゃ(苦笑)?ですわ。。。。またしても相変わらず、グッズ製作意識の希薄さアゲイン??こっちは買う気満々なのに、Tシャツ2種(1種は白/黒展開)とタオルのみってのはどうなの??そんな市場規模なのかなぁ、今や。。。。う〜〜ん、振り返ると何だかジャムのライブ、っていうかウェラー絡みのライヴのグッズっていつもイマイチだった気がするんだよね(苦笑)。顧客の気持ちが掴みきれてないっていうか。ウェラー関係のオフィシャル(ツアー・グッズではない)の方が昔からずっと良かった。すなわちファンが愛と尊敬を込めて作ったものだね。この辺は勉強になる。自分の仕事も反省だ。

会場ではオープニング・アクトのOKAMOTO’Sが演ってました。最高のリズム隊(全盛期のフーを彷彿させる)と、エッジの効いたリズムとリフが気持ち良いギターリスト!若いのに凄い良いじゃん!でヴォーカル。。。。う〜〜ん、ルックスは良いんだけどね。。。。ちょっと歌声が〈子供声〉で惜しい!でも若いんだからきっと伸びしろあるよね。期待しとこうかね。フーとDr.フィールグッド(Dr.Feelgood)が混ざったようなバンドになると良いな。それってまさジャムの魂とルーツだし。



その後、ステージ・セットの転換に約30分.その間のBGMはニール・ヤング(Neil Young)にボブ・ディラン(Bob Dylan)と来たもんだ!!いやいや、老成しましたなぁウェラー御大。今はそんな気分なのね。ちょっとホンワカしましたけど(笑)。きっとレナード・コーエンも今の彼には間違いなく〈響いて〉いるはず!?って思っちゃった。 ステージ・セットは事前の予想に反して凄くオーソドックスなロック・セット。パーカッション&キー・ボードのエリアが少しガッチリの作りで一瞬ツイン・ドラムのステージに見えてビックリってのがあったけど。最新作に則した、もっとクラブよりのステージ作りになっているかと思いきや、実際には前記のようなBGMが実によく似合う作りだった。 それにしても2階席一番前からフロアを見下ろしてビックリ。客層、けっこう上だなぁ!若いバンドからリスペクトを受けているっていう触れ込み(実際、音楽面ではその通り)なのに、そんな状況が見事に反映されてない!あんまりオ洒落じゃないし(苦笑)。上から見たら後頭部のつむじ周りが薄くなってる人多いし(苦笑×2)。外人さん多いのに金髪少なく、むしろ金髪、自分くらいだし(苦笑×3)。そもそもウェラー・リスペクトのファッション、髪型してるの、自分くらいだし〜〜(苦笑×4)!!!!あれれ??そんな落ち着いたマーケット/ファン層になっちゃってたのかなぁ?と。。。。まぁ、これが時間の経過ってことかなぁ。


さぁ、いよいよのパフォーマンス。ぶっきらぼうにステージに早足で登場して、ギターを抱えて歌い出す姿は、うん、30年変わらない。ギターの弾き方、うん、変わらないな、これも。ジャンプしたりは無いけどね、さすがに(笑)。希代のリズム・ギターリストとして最高な滑り出し。冒頭の「コンニチワ!」にも笑っちゃったけどね。人間歳をとると柔らかくなるもんだ。。。。でも、発せられた歌声の瑞々しさには一瞬ハッとさせられた。時間が一瞬で巻き戻るって言ったら月並みだけれど、まさにそんな感じ。
当然のことだけれど、70年代ロンドンに颯爽と現れた〈怒れる若者〉の姿はもうそこにはない。その代わりに在るのは熟成された〈知り過ぎた男〉の姿。ジャムでのデビューから35年、数々のフィールドを戦い抜いて、そこにあるはずもない〈答え〉を求め、探し続けて来た男の姿。ミュージシャン、ギターリスト、ソング・ライター。。。。数々の肩書きは今のウェラーの栄光の歴史とともに燦然と輝く。
ジャムの曲も3曲も聴けた!たぶんライヴでは初なのではなかろうか?のラスト・アルバム『ギフト(The Gift)』(今秋にリリース30周年記念のレガシー・エディション発売!)から『ランニング・オン・ザ・スポット(Running On The Spot)』、そしてイントロで昇天!しかしジャム時代の8掛けのスピードで『ストレンジ・タウン(Strange Town)』、またもやイントロで失神寸前!しかしサビ後の歌メロは、リリース当時のハモリの下の部分の歌唱で『スタート!(Start!)』。いやいや!ってなことを書いていても、もうこれだけで最高に嬉しかったんだけれどね。
スタイル・カウンシルからの楽曲では、リリース当時にオ洒落&ゴージャスなアレンジが印象的だった『マイ・エヴァー・チェンジング・ムーズ(My Ever Changing Moods)』と『シャウト・トゥ・ザ・トップ(Shout To The Top)』の2曲が心地よいギターのカッティング・リフに導かれて、凄くオーガニックなアレンジで披露された事に時代の流れを感じた。大好きな『ロング・ホット・サマー(Long Hot Summer)』はエレピの前で熱唱したウェラー周辺のサウンド・コンディションが凄く悪くって残念! やっぱり好きになれなかった(苦笑)、自分のウェラー一時離れきっかけの頃、90年代初頭のソロ楽曲、2曲程。今回も眠くなっちゃいました。30歳当時にライヴで聴いた時もたったまま寝そうになった曲だもん、そりゃあそうだ。

で、全体のムードとしては、サウンド感は予想外というか、ちょっと嬉しかったのは、最新作から一つ前の近年大好きなアルバム『ウェイク・アップ〜』の感じだたってことかな。ギター・ロックな感覚をヒリヒリと訴求してきてくれる!
そして曲の構成は、もう完全に予想通り、ポール・ウェラーの音楽史を俯瞰させる、豊穣な内容といって良いんじゃないかな。ソング・ライターとして彼がいかに優れているかという事を、これでもか!っていうくらいに突きつけてくれる好内容。そして、ちょっとヒネりを加えた過去の代表曲選びっていうウェラーらしさもしっかり健在。

ライヴに行く前に懸念していた、キャリアのピークがここ?みたいなのは完全に取り越し苦労だった。この形なら、まだまだ演れるし、カッコ良いし、観ていきたいし、ついて行きたいし(笑)。

何か新しいトレンドに無鉄砲に首を突っ込んだりっていう、いつもウェラーを振り回していた〈性(サガ)=これこそエヴァー・チェンジング・ムーズ!〉が良い感じに老成し、解脱していて、すごくウイズ・エイジングな感銘を得たライヴでありましたね。
最高に良かった!感動した!って軽々しく書いたらウソになる。冷静に観て、パフォーマンス・レヴェルとしては及第点の内容だった。その声や立ち姿、そして楽曲に自分の想いが盛られていくので、それはそれで自分にとっては100点満点の内容であったとも言えなくもないだけど。

今回のライヴは、自らの青春期、そしてそこにあった感受性の〈その後の日々〉に対する答え合わせのようなものだったのかな。そういう意味では、そこで再確認した自分の現在の日々や価値観、そして老朽化していないはずの感受性、それらはウェラーの〈在り様〉と照らし合わせたとき、間違いなく大文字でYES!!を返してくれたんじゃないかなって気がする。

まぁ、それにしても30年以上にもわたって自分を魅了してくれるアイコンって凄いな。自分が10代の時はロックの未来が、そしてそれを前にしている自分の未来が、こんなふうに今でもワクワク感で繋がっているなんて思いもしなかった!
これを最後まで読んで下さったヤングなあなた、その30年後はどうなっているんだろうね??


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