Rocker and Hooker

ラスベガス・ミラージュ・ホテルで"LOVE"を観たのはもう6年も前だ。
ビートルズの楽曲で綴るミュージカル?である。
LOVEはシルク・ド・ソレイユとビートルズの版権を扱うアップル・コープスのジョイント・プロジェクトである。
アップルが劇場パフォーマンスにビートルズの楽曲使用を許可したのは初めてのケースである。
もちろんビートルズのメンバー、遺族の了解あってのことだ。
サウンド・トラック担当はビートルズの音楽プロデューサー・ジョージ・マーチンと彼の息子であるジャイルス・マーチン。彼等はビートルズのマルチ・テープからビートルズの音源を取り出し解体、2つのナンバーを合体、ボーカルと別バージョンのインストルメンツを組み合わせ編集を施しオリジナルに新しい魅力を加えたサウンド・トラックを作り上げた。
ビートルズの作品に手を加えると言うこの行為にはかなり批判的な声もあったが僕は全くそうは思わない。この事に関しては次回意見を述べたい。
で、この"LOVE"である。そもそもシルク・ド・ソレイユはサーカス+演劇と言った感じの独創的なライブ・エンターテインメントとして定評がある。
まず、パーフォーマー達のアクロバット的演技に度肝を抜かれるが、やはりなんと言っても素晴らしいのはその音楽。物語は第2次大戦中のリバプールから始まる。
ジョン・レノンがドイツ軍の大空襲の最中リバプールの産院で産声を上げた話はビートルズ・ファンなら誰しもが知っていることだと思う。そして彼等の少年期、ビートル・マニアという世界的ヒステリックな現象、サイケデリックな時代を背景にショーはビートルズの軌跡を辿る。映像や音声はビートルズ本人のものも編集コラージュされている。
このショーを通じてビートルズの音楽とは?そしてその奇跡とも言える4人の存在、結びつきがいったいなんだったのか改めて理解できたような気がする。
その答えは"LOVE & PEACE"である。
あの4人の存在こそがまさしく"LOVE & PEACE"だったのだ。だから世界は熱狂した。そして彼等を求めた。


リンゴ・スターがビートルズ・アンソロジー制作の時に語っている。
「僕らはお互いを愛しみ、思いやっていた。嘘みたいに仲が良かったんだ。僕らは心から愛し合っていた。ほんとにビートルズは素晴らしかった。」のリンゴの言葉を思い出し今更のように感動、翌日も当日券を購入して二度”LOVE"を観るに至った。
1967年、ベトナム戦争が激化したその年、世界中の若者が“SUMMER of LOVE"のスローガンのもと反戦を唱えた。その先駆けとなったテーマ・ソングが”All You Need Is Love"であったと思う。
あれから40数年経った現在も、世界はまた同じことを繰り返し荒れている。中東の紛争は一向に収まる気配がない。尖閣諸島や竹島の問題は日本に不穏な空気をもたらしている。そして北朝鮮による核実験、世界はまた歪み始めているのだ。
だから、今こそ再びビートルズが必要なのかも。あの頃、ビートルズを聴いて育った世代が今の世界経済を動かしているのならば、今、こんな時代だからこそ是非もう一度ビートルズに耳を傾けて欲しい。


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