Rocker and Hooker

日本男子くらい帽子が好きな人種はいないだろう。礼服や格式張った時に被るポーラーやソフト・ハット、季節を問わずアルペンやサファリ、アポロ・キャップ(=ベースボール・キャップ)、シワッチに代表されるコットンもの。ハンチングやベレー。夏はストロー・ハット、冬はウールキャップ(正ちゃん帽なんて代物もあり)、そして最近では老若男女、流行しているトレモント・ハット=ポークパイ・ハットやミルキー・ハット etc

街を歩けば帽子愛用者の数が多い事に皆さんもお気づきの事だろう。海外に行ったら昔は眼鏡、今は帽子着用で日本人の区別が出来る。よく海外の教会や寺院、レストランに入ってまでも帽子を着用していて注意される日本人を垣間目撃する。何故にこのように日本人の帽子率は高いのか?日本人って妙に髪型が決まらなかったりするのってやっぱり頭の形にあるんじゃないかなぁ?
頭蓋の形って言った方が良いのかも。どっか後頭部が絶壁だったり。あと、頭部より顔の方が大きいとか。コーカサス系に較べて頭蓋が横に広がってるし。コーカサス系やアフリカ系って後ろに頭蓋が伸びてて正面から見ると顔はほっそりしてて卵形、肩幅や身体とのバランスが凄く良い。あと、俗にいう一般的日本人6頭身〜7頭身ね。5頭身くらいの人も中に入るな。。日本人って無意識のうちにこれらバランスを補うために帽子を愛用している人ってけっこういるような気がする。斯く言う僕も体型の骨格をカバーしてくれるし、ハットものなんかはある程度顔も隠せるしさ、そんな意味合いから長い間帽子を愛用してるような気がする。

しかし、そうは言うもののやはり帽子が好きだった事に変わりはない。こういう嗜好は遺伝的な事も多少関係しているような気がする。
僕の母方の祖父はとにかくソフトハットが好きだった。帽子に限らず眼鏡、ステッキ、時計、靴、ドクターズ・バッグ(彼は内科医でした)、そしてこれらのアイテムに似合うシャツとスーツを仕立てる事に何よりもお金を使っていたそうだ。そして蓄音機と大量のSP盤が残っていたからこれにもお金を使っていたのだろう。僕の小さい頃の記憶だが70を超えた祖父が真っ赤な自転車に乗っていたのを覚えている。その車体にユニオンジャックのマークがあったのを鮮明に覚えているからあの自転車はひょっとするとラーレー社のものだったのかも。しかし昭和30年代前後、しかも高知で祖父はどうやってあの自転車を手に入れたのか未だ持って謎である。
祖父の死後、彼が残したものはここに列挙したようなものしかなかった。家も一生借家住まいだった。祖母や5人の娘には財産らしいものはほとんど何一つ残さず、結局、先に列挙したようなアイテムを僕たち孫である従兄弟連中が分け合った。
僕は眼鏡と帽子をもらった。帽子はどこかに行ってしまったが眼鏡のフレームは今でも持っている。

で、そんな祖父譲りの僕の帽子好きの始まりはベースボール・キャップからだ。
何と言っても昭和30年代の小学生はみんなジャイアンツのマークが入ったキャップを着用していた。小学校時代の遠足の集合写真なんか見ると男子はほぼ全員ジャイアンツのマークが付いたキャップを冠っている。あとは数人がストライプの入ったキャップにT Hを掛け合わせた阪神タイガースのキャップ。市販されているのはほとんどジャイアンツのマークが入ったもので阪神タイガースのものは少数ではあるがデパートなんかで見つける事が出来た。ところが小学生の僕は大洋ホエールズのファンだった。人とは同じものを持ちたくない習性もあり僕はT Wのマークの入ったキャップを探し続けた。結局それはどこにも見つからず、最後の最後に近所の東大に通っているお兄さんから東大野球部のTと言うワッペンを手に入れてもらい、おふくろに似たようなフェルトの生地でWのワッペンを切り取りTと合体させて刺繍してもらった。
次に僕が興味を持った帽子は言わずと知れた63年〜66年頃までジョン・レノンが着用していた通称ドノヴァン・ハットと言われるキャプテン・ハットである。
これに似たものを僕は銀座のトラヤで見つけた。コーデュロイで出来たそのハットが欲しくて欲しくて堪らず中学生の僕はお年玉をかき集めて手に入れた。記憶としてはLP盤よりちょっと高い値段だったから2000円〜2500円くらいだったのかも。つまり、当時いかにレコードってモノが高額商品だったか推察出来る。

で、1970年代に入ったばかりの頃はちょっとアポロ・キャップにも魅かれ、横須賀に行けば刺繍してくれると言うのでドブ板通りをの店を訪ね歩いた。

そして次なるは、冬のウール・キャップ。これは20代になって「カッコーの巣の上で」を観てはまった!ジャック・ニコルソンがシャンブレー・シャツにLEVI'S501、足下にはくたびれたレッド・ウィング、そしてA-2タイプのレザージャケットと言う出で立ちにウールキャップを冠っているのだ!このスタイリングに圧倒され僕はアメ横までこのウールキャップを探しに行く。サンフランシスコ放浪から帰った僕はワシントンD.C.のシャンブレー・シャツ、G-1のレザー・ジャケット、501、レッド・ウィングを日本では誰よりも早く手に入れていた。このウール・キャップが好きでこれまでにどのくらい買っては冠り潰しただろう(変な言い回しだが履き潰すという言葉があるので)。

そしていよいよストロー・ハットに僕の気持ちは傾いて行く。勿論、ジョン・レノンである!ジョン・レノンが軽井沢の休日でさり気なく冠っている写真を観た時、その涼しげなスタイルに魅了された。そして決定的だったのはゴッド・ファーザーのワン・シーンでアル・パチーノ達がキューバに乗り込んで行くシーン。そこに登場する連中のマドラス・ジャケットにパナマ帽というスタイル。くやしいくらい似合っている!!これらはみんなボルサリーノのものだろうか?このイタリアン・スタイルのハットの洗練されたフォルム。(でもよくよく考えると子供の頃の僕はローハイドなんかをテレビで観てカウ・ボーイのテンガロン・ハットに憧れていたので、この手のハット・フォルムが好きなルーツはそこにあるのかも。)

以後、ここ何年かは夏になるとずっとストローハットを着用している。着用してはまたも冠り潰している。しかしながらなかなかお気に入りに出逢えるものではない。悲しいかな日本人体型の自分にどうもしっくり来るものが無かった。そして素材、型くずれしたり、デリケートゆえストローに亀裂が生じたり、はたまた内側の汗止めで額が蒸れてしまったり。。

ところが昨年、パリのLANVINで出逢ったこのストローハット。大きめなストローの編み込みは丈夫でしっとり柔らかく通気性も抜群、一切蒸れる事も無い。
しかも頭蓋の部分が浅からず深からず、鍔の部分もやや広めで冠ってみると妙にしっくり来る。
で、キープ分としてこの夏、銀座のLANVINでもうひとつ購入。ハットベルトのカラーが2種類になったからジャケットやパンツ、靴の色をチョイス出来る!
今年は更にこのストローハットが重宝しそうだ。


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