Rocker and Hooker

抱きしめたい(I Want To Hold Your Hand)という映画がある。
タイトルから判るように題材はビートルズ。
ビートルズを題材に扱った映画は何作もある。そのほとんどはデビュー前の彼らに焦点をあてたもの、最近では「NOWHERE BOY」が記憶に新しい。

また、少し古くなるがNOWHERE BOYのあとに観るなら「BACK BEAT」がお勧めである。
前者はリバプール時代のビートルズ、後者はハンブルグ時代のビートルズが描かれている。
また、ミュージカル仕立ての「ACROSS THE UNIVERSE」、これはビートルズの楽曲を題材にひとつの物語が進行、なかなかの秀作である。
また、ビートルズ以降のジョン・レノンに焦点を合わせたものも多数存在するし、古今東西数え上げたら駄作も含めてキリが無い。
それほどビートルズの歴史は題材としてもドラマティックだと言う事だ。
しかしいつも思うのはほとんどの場合、ポール・マッカートニー役はどこか間抜けな顔が多く、ジョージ・ハリスン役はいつも垢抜けない。
さて、この「抱きしめたい」であるが、内容はビートルズがケネディ空港に到着、初めてアメリカの地を踏んだその日からエド・サリヴァン・ショーのパフォーマンスが行われる3日間(1964年2月7日〜9日)を描いた青春ドラマである。
主人公は高校の同窓生であるハイ・ティーンの男女6人。アメリカ全土を熱狂の渦に巻き込んだビートルズの上陸、その彼等を一目見ようと6人の主人公達はあれやこれやと騒動を引き起こす。そしてビートルズが出演するエド・サリヴァン・ショーのチケットを手に入れるため6人は四方八方手を尽くす。
本物のビートルズの出演はもちろん無いがニュース映像でのビートルズはふんだんに使われている。そしてビートルズの後ろ姿やブーツを履いた足下は彼等の表情をよくつかんだ役者によって演じられている。
圧巻はエド・サリヴァン・ショーのパフォーマンス。
テレビ・モニターには本物のビートルズが登場、エド・サリヴァン・ショーの「シー・ラブス・ユー」演奏シーンが流れる。
そして観客席から遠くの舞台に見えるビートルズは役者が演じている。ギターを引く手元がアップになり「シー・ラブス・ユー」のリフを弾く。
本物のビートルズの映像と役者が演じるビートルズのライヴ・パフォーマンスを見事に編集している。
物語の結末は一組のカップルを除いた4人の主人公がエド・サリヴァン・ショーのチケットを手に入れビートルズを観ることに成功!!チケットを手に入れる事の出来なかった失意の二人、しかしクライマックスはラスト・シーンにやってくる。このラスト・シーンの奇跡が素晴らしい。
この映画のエクゼクティブ・プロデューサーはなんとスティーブン・スピルバーグ!!そして監督はロバート・ゼメキスである。
全編に流れる17曲のビートルズ・ソングがこの作品を否応無く盛り上げる。
もし現代、この映画を制作するなら多大な著作権使用料がかかるはずだ。この作品が制作されたのは1977年、公開されたのは1978年テレビ番組としてだった。
その当時でさえビートルズの音源を使用するには相当のリスクがあったはずだ。
ゆえにテレビ・プログラムという扱いで契約が成立したのかもしれない。つまり劇場用のプリント作品と違い、放送使用という形である程度著作権問題は緩められたのかもしれない。
この作品は1980年代に日本でロード・ショー公開された。そしてビデオ、レーザー・ディスクとしても発売された(現在は廃盤)。
写真のDVDはアメリカでリリースされたもの。5.1chにリミックスされていると言う事はAPPLE、EMIも了承済みか?なにはともあれ今一度デジタルリマスタリングで劇場公開、そしてブルー・レイでの日本での発売を望む!!


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