Rocker and Hooker

いやいや、いくら何でも先月のジャム(The Jam)のラスト・アルバム『ギフト(The Gift)』の30周年レガシー・エディションに対しての解析コメントが重く読み辛過ぎたと思うんで、今月はあっさりと。うん、そのジャム、ポール・ウェラー(Paul Weller)への個人的エピソードってことで。。。。え“〜〜ッ!?またかい??

過去、このマガジン連載40回を重ねますが、ジャムやウェラーに言及しているのが計6回。今回41回目で計7回。打率1割7分台。うん、プロ野球なら成立しないな。サッカーのシュート決定率とするなら??いやいや、まぁ、率が高すぎないってことで、ご容赦!!そもそも、このコラムのタイトル『When I was young BOY ABOUT TOWN』っていうのがジャムの名曲『When You’re Young』と『Boy About Town』2曲の合わせ技だったりするし。。。。

それにしても今月、今現在、別件仕事で聴いているのがセルジュ・ゲンスブール(Serge Gainsbourg)やムスタキ(Georges Moustaki)だったりするのに、コラムのネタのことを考えると始めると結局ここになってしまう。。。。つまり先月からの熱が冷めないってことかな??うん、BGMもジャムの初期ライヴ『The 100 Club 1977』にシフト!言わずと知れたパンク〜ニュー・ウェーヴ全盛期の70年代イギリスはロンドンの伝説のライヴ・ハウスである100 Clubでのジャム、初期のライヴだ。このハコでは何とデヴィッド・ボウイ(David Bowie)から始まりオアシス(Oasis)もプレイシている。閉店の危機にあったって聞いた最近だけど調べたらまだあるみたい!
http://www.the100club.co.uk/
ほらほら!このカルチャーは死なず!ってことで、今月はやっぱり表題のネタで行ってみますかね。

それは、ウェラー(ジャム時代)からの8点、イメージのプレゼントのこと。

●タイトな黒のスーツに黒ネクタイ。
これはもう典型的な初期ジャムの3人のイメージですね。ジャムと言えばいまだにこのイメージが一番強い。最初の2作品までの〈衣装〉なんで、キャリア全部を通せば1/3くらいのものなんだけど。鮮烈だったからね。あのシャープでエッヂの立った音の感触とピッタリで。
埼玉県さいたま市(当時は浦和市)在住の高校生の自分にとって、ネクタイへの最初の憧れでした。それとスーツ。親父の背広で黒っぽいのを探して着てみたり。で、とりあえず街の洋服屋さんを覗いたり。無い無い、当時の浦和にあんな細いスーツ。都内まで足を運んでみて、ようやく近い感じ?だったのがJUN(70年代田舎の少年の憧れの日本発ブランド)のスーツ。高校生には高価過ぎて買えないし。やっとのことで夏物の綿のペラペラのジャケットのみを購入してからは、勝負服と言えば全部これだったな、真冬以外は(苦笑)。すぐによれよれになっちゃったけど。遠い日本の高校生の、ロンドン・ファッションの間違った解釈。


●白黒コンビのボーリング・シューズ。
黒のスーツと合わせて、初期ジャムのシャープなイメージに拍車をかけていたのがコンビのボーリング・シューズだった。あの頃のウェラーの印象って、顔や体つき、骨格、そしてつま先の尖ったこの靴のせいで、とにかく上から下までとんがりまくっていた気がする。この靴に近いモノは街の靴屋さんで割とすぐに探せた。でも何かどっかが違う。
ファッションの匂いがしない。ちょっとゴルフな感じ(苦笑)?さすがにこれは断念。で、キャンバス地でコンビ(黒い合皮と)になっているのを購入。上のジャケットと合わせて勝負靴。でもボトムはブラック・デニム(ノン・ブランド)だったりするので、全身を見回すと、〈何となくウェラー風〉でしかなく。。。。何かが決定的に違っていたのは言うまでも無い。


●ロンズデール(LONSDALE)のスウエット。
中〜後期のウェラーが良く着用していた、今じゃモッズの典型的なアイコンでもあるロンズデール。もともとはスポーツ(ボクシング)ウェアからスタートしたこのブランドのカジュアルなTシャツやスウェットをウェラーは細身のパンツなんかに合わせて着ていて。それがとってもステキで。当然、浦和在住の予備校生(になっている)は近所のカジュアル・ウェア・ショップでこれを入手できるわけもなく。ところが、これはひょんなところで発見!当時はロックTシャツ(UK寄り)を購入するのに一番品揃えが豊富だったのが御茶の水にあった「ロック座」。シンコーミュージック発刊の当時最メジャー月間音楽誌『MUSIC LIFE』のフラッグ・シップ的なお店でした。ここで一点だけハンガーにかかっていた。白地に濃いブルーのあのロゴ!見つけたときは嬉しかったなぁ。今じゃあ普通に見かけるけどね。女子高生がここんチのロゴのスポーツ・バッグを持ってたりするとすごく微笑ましい。


●赤いデニム・ジャケット。
これはウェラーの中でも超期間限定なイメージだと思います。2回目の来日公演の時に着ていて。これが超鮮烈で。Gジャンはよく見かけたけど、色モノでは黒か白。赤なんてどこにも売ってない。でもあの赤い感じがどうしても欲しくって。お恥ずかしいお話、代用で購入したのは赤いスウィング・トップ・ブルゾン(苦笑)。何にも解ってない映画好き仲間の友人から「おッ!ジェームス・ディーン好きだったっけ!?ロックン・ロールしてるねぇ!」なんて言われて。。。。モッズと真逆のカルチャーの人になってしまった。で、そのブルゾンにジャムの缶バッヂを一勝懸命つけたり。で、余計にわけの解らないカルチャーの人になってしまったり。。。。あのライヴの時に見た赤いデニム・ジャケットに一番近いイメージのものを10年くらい前にゲット。20年越しの夢実現(苦笑)。スカル・ジーンズ(Skull Jeans)のやつ。畝の細かいコーデュロイなんで、赤の発色抜群。シルエットも定番ブランドのそれよりも細めでカッコ良い。


●大きめの丸いサイケなサングラス。
これも後期のウェラーを象徴するアイコンの一つだな。シングル『スタート!(Start!)』のPVやその頃のアー写、シングル『アブソリュート・ビギナース(Absolute Beginners)』の12inch盤(USA/カナダ/ドイツでリリース)のジャケットなんかで見られる。この頃の彼は着ているものもモッズの匂いよりも、ロンドンの知的サイケデリック・カルチャー圏の影響を強く感じるもの、すなわち後期ビートルズのポール・マッカートニー(Paul McCartney)の感じに近くなって来ている。で、この丸いサングラス。薄いスミレ色のレンズがステキ。うん、当然、これも日本では入手困難。きっと白山眼鏡さんなんかには近いのがあったんだろうな。敷居が高くって突入できないでいたもんなぁ。たまにアンティーク・ショップでこれに近いヤツを見つけても、これが驚く程小振り。欧米人、こんな頭蓋骨が小さいの!?ってくらいの。結果、新宿西口のメガネ屋さん街(30年前はメガネ、サングラスのメッカはここだった)でオーダー・メイド。形は相当近かったんだけど、何故か金縁で薄い茶色のレンズ。奇妙なロンドン・サイケ解釈が完成。。。。
写真を見てもらえばなんと!!日本、中野サンプラ公演の時にかけてきていたのがこれだ!!


● シェリフ・バッヂ。
これもシーン限定。シングル『ゴーイング・アンダーグラウンド(Going Underground)』のPVで、細めの黒いスーツの右胸で輝く星(六点)のプレートに目が釘付け。リリース当時は何のバッヂなのか確認出来ず。その後、ようやくコンディションの良いPV映像で再確認。それでもまだ何を付けているのか解らなかったけど、ジャムの解散に際してリリースされたヴィデオ・クリップ集『ザ・ジャム・ベスト!!〜スナップ(The Jam Video Snap!)』で穴の空く程再々確認。遂に判明。あれッ!?保安官バッヂ??たぶん間違いないです。速攻、買いに行きました。上野アメ横(笑)。ウェスターン・グッズ充実のモデル・ガンのお店に。残念ながら、今は無くしてしまったけれど、写真と同タイプのやつでした。ウェラーと同じように黒いジャケット(当時は大学生なんで、バイト代も入って少し裕福。Men’s BIGIが買えました)につけても、どうもしっくりこなかったなぁ。。。。デニム・ジャケット(前に書いた赤いヤツかも?)にそれを付けているウェラーのモノクロの写真がこれです。


●リッケンバッカー(Rickenbacker)のギター。
ジャム時代のウェラーって言えば、リッケンバッカーのギター。もう本人とそのギターのイメージがあわさって一つの象徴になっちゃってるってくらいの。現行のウェラーのオフィシャルWEBショップで扱っているTシャツの写真もそんなイメージが多い。ってことは本人もそこのところは自覚済みってことでしょう。サイトを見てすぐに自分が購入したこの3点にも全部リッケンバッカーのギターが写っている。もちろん彼はギブソンのレス・ポールSGやフェンダーのシン・ラインも要所要所で使用してはいる。前者はフー(The Who)のピート・タウンゼント(Pete Townsent)、後者はカーティス・メイフィールド(Curtis Mayfield)からの影響だろう。でもジャムの時代を通してウェラーが守り続けたのはリッケンバッカーのイメージだ。その中でもとりわけファイアー・グロウと呼ばれる赤いサンバースト(塗装ぼかし)のカラーのもののイメージが強烈。自分も1966年製、ウェラー使用のものとドンズバの一本を20年程前に購入。永遠の宝物だ。加えて、彼の他のリッケンバッカーでは黒いモデル、白いモデルが有名。それぞれに印象的なステッカー・チューニングがなされている。とどめは中期のウェラーのサイケ時代に好んで使っていたグラフィック・ペイントの一本。先にも書いた『スタート!』のPVでも観れます。ミニチュアのモデルも出てるくらい、エポックな一本ですね。


●チェックのウール・パンツ。
モッズ・ファッションの象徴とでも言える、細いシルエット、チェックのウール・パンツ。今の若い世代の日本の男のコ達は足もスラリと細く長く、お尻も小さいからこのタイプのパンツ、むしろ30年前よりも主流ってくらいにはきこなしているコが多い。でもね、自分が若い頃、ウェラーに憧れてこんなパンツをはこうものなら。。。。またしても勘違いされたモッズ解釈に。うん、たま〜に細くって華奢なヤツがこんなパンツをスッキリ着こなしているのを見ると本当に羨ましかったなぁ。当時のはウェストの位置なんかが工夫されてなかったんで、ピッタリ細めを着用すると足が短く見えちゃうんだよね、日本人体系。ウェラーはこのパンツにそれこそロンズデールのスウェットを合わせて、チョイ崩しのモッズ・ファッションを提案してくれた。最近じゃあハイ・ファッション・ブランドが大人向けに細めのチェック・アンツなんかを作ってくれていたりするんで、ゴルフな感じにならないよう(笑)に注意して、ジャケットに合わせてはいてみたり。うん、30年越しの夢に少し近づけているのかな。


さてさて、ジャムやウェラーのことを書き始めるとついつい長くなってしまいますなぁ。。。。ノスタルジックな想い出をたぐり寄せていたら、今でもワクワクするコト/モノがいくつも甦って来ましたが、そろそろお開きにしましょう。では、最後に番外編の〈イメージ〉をもう一つ。。。。
それは、「遂に1962年生まれの当時日本人骨格の私が手に入れることの出来なかったモッズ・ヘアの似合うあの後頭部」です(笑)。。。。
ウェラーのあの最高にステキな髪型は、あの頭蓋骨の形があってこそ!でしょ?

才能とルックスに恵まれたイギリスの若者が、彼の10代後半〜20代前半において、遠い遠い、Far Eastの日本の郊外の若者に与え続けてくれた音楽、イメージ、そしてその影響。それらは今も全く色褪せることなく輝き続けている。
先月に解説したジャムの最終スタジオ録音作品『ギフト』。ギフトとはウェラーに与えられた〈天賦〉のモノ。そして一方では、ウェラーがここ日本の自分に与えてくれた〈贈り物〉の意味に他ならないのかも。


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